クイーン 2


2R と Q の交換

2R と Q の交換となる機会がときどきあります。自分の Q と相手の 2R を交換
するのは、始めは抵抗があると思いますが、駒の価値としては 2R > Q のため
状況をよく見て、交換して問題なければ、相手の 2R と自分の Q を交換しましょう。

始めは無理に交換することはないですが、R1500 を超えたら、失敗を恐れず経験として積極的に交換してみましょう。駒価値で 2R の方が高いからといって、状況をよく見ないで交換してしまうと、2R 側より Q が残っている側が有利となることもあるため
十分注意は必要です。参考例を見てみましょう。

2R と Q の交換 成功例


17.Nd4?? Rg3 の局面


FM bolevole vs. pechen 1-0

白が Ne2 を d4 に移動させたため、17...Rg3 で白は Q と 2R の交換を強いられます。

18.fxg3 Rxg3 19.Rbf1 Rxh3 20.gxh3 下図




黒がポーン1つ多く、この時点では黒優勢です。 2R と Q の交換となる時、 2R が
残る側が気をつけることは、2つのルークを連結させられるか? ということです。
ルークを連結させられれば、ルークを連結させながら相手のポーンを狙ったりしていけます。

しかし、2R と Q の交換後、 2R を連結させられない場合、2R を活用させづらく
相手 Q からダブルアタックを受けて不利を招きやすいです。

上図局面ではお互い2つのナイトが残っているので、複雑な状況ですが、白は2つの
ルークを連結させながら、黒のポーンを攻めていくでしょう。もちろん攻めることだけでなく、キングの安全性や、駒損しないよう守りについて考えねばなりません。

2R と Q の交換となった後、2R をどのように活用していくか分からなければ、ゲーム後にチェスソフトの分析を参考にするといいでしょう。ネットで検索すれば多少は見つかると思いますが、2R vs. Q の参考例は少ないです。

基本的には2つのルークを連結させながら、相手のポーンを攻めていったり、このゲームのように相手キングをバックランクに閉じ込め、バックランクメイトをねらったりします。



28...Qxe6


ナイトが1つずつで、ポーンの数は同数となり、2R 側の白が優勢となってます。ここから 2R 側が勝つのは容易ではありませんが、勝敗に関係なく、このような局面を経験することはチェスの実力を高めるためにとても役立ちます。チェスソフトでこの局面を作成し、自分が 2R 側、 Q 側の両方でコンピューターと対戦すると良いでしょう。コンピューターが 2R をどのように使ってくるか分かりますし、失敗しながらも、自分が 2R をどのように使ったら良いかも学べます。

29.Rf5 Qe8 30.Rh6 Ng7 31.Rfxf6 Qe5+ 32.Nf4 下図




32...Ne8??  d6 ポーンを守るこの手は悪くないように思えますが、33.Rf7+ の後、34.Re6 でダブルアタックがかかります。

32...Ne8?? 33.Rf7+ Kc6 34.Re6 Qg5 35.Rxe8 Qg3+ 36.Kh1 Qf3+ 37.Kg1 Qd1+ 38.Kf2 Qxc2+ 下図




白優勢ですが、白キングはクイーンに攻撃を受けやすく油断できません。

39.Ne2! Qxa2 40.Rf6 Qxb3 41.e5 Kd7 42.Ref8 dxe5 43.R8f7+ Ke8 44.Rxa7 下図




黒キングがバックランクに追いやられました。白勝利まであともう少しですが、クイーン
からのチェックをどう防いでいくか?



44...Qxd3 45.Rxb6


46.Rb8+ の狙いがあるだけでなく、 45...Qf5+ 46.Ke1 で黒は 46...Qb1+ とできないため、 45.Rff7 より優れてます。

45...Qf5+ 46.Ke1 Qc8 47.Rh6 下図で黒リザイン






21...Nxg4?? の局面


hitsujyun vs. systematis 1-0

短時間ゲームゆえのミスでしょう。 
22.Rxf8+ Rxf8 23.Rxf8+ Qxf8 24.Qxg4
22.Qxg4 Rxg4 23.Rxf8+  いずれも白優勢となります。

22.Qxg4 Rxg4 23.Rxf8+ Kd7 24.R8f7 下図



黒はクイーンを失うことになり、マイナーピース1つ多い白が優勢です。


2R と Q の交換 失敗例

20.c5 の局面


HansAnders vs. hitsujyun 0-1

20...Qxe6 21.Rxe6 Kxe6 とすれば 2R と Q の交換になります。実際ゲームではそうなりました。 20...Nc6 とすれば 2R と Q の交換にならず、メジャーピース交換となりそうなので、無難な選択ですが、20...Qxe6 とするのも悪くはありません。



20...Qxe6 21.Rxe6 Kxe6


チェスソフトの分析を見ると、この時点ではほぼ互角のようです。 2R と Q の交換となり、2R 側が有利であっても、クイーンの攻撃力が厄介なため、2R 側は慎重に対応していかねばなりません。

22.Qc2 Kf7 23.Nbd2 b5 24.b4?! Nc6?! 25.Qb3 Rad8 26.Nf1 Re2? 下図




ここで黒にミス、 27.Ne3 で Re2 が閉じ込められてしまいます。

27.Ne3 Nge7? 28.Kf1 Nf5?? 下図




29.Nxf5 とすれば白優勢ですが・・・
29.Kxe2?? Nfxd4+ 30.Nxd4 Nxd4+ 31.Kd3 Nxb3 32.axb3 下図




白もミスしたため形勢逆転で黒が勝ちましたが、29.Nxf5 としていれば白が勝ったと
思いますので、2R 側の黒が失敗したと言えます。

ミスをすれば負けてしまいますが、貴重な経験となります。R1500 ぐらいになったら
2R と Q の交換を積極的に行ない経験を積みましょう。


3つのピースと Q の交換

稀に 3つのピースと Q の交換 ( またはそれに相当する局面 ) となることもあります。 Understanding Chess Middlegames - John Nunn の本によると、ミドルゲームにおいては大抵 3つのマイナーピースの方が価値が高く、エンドゲームにおいてはクイーンが 3つのマイナーピースと同等以上となる場合が多いようです。

52d_Middlegames_3 pieces for a Queen
http://www.chessgames.com/perl/chesscollection?cid=1016182

上記 URL のページは 3つのピースと Q の交換に相当するゲーム集です。


14...Nd7? の局面


Petrosian vs. Bisguier 1/2 - 1/2

15.Nxc6! bxc6 16.Nxd5 cxd5 17.Bc7 下図




17...Ndf6 18.Bxd8 Rxd8 下図




この場合は、白の 3つのマイナーピースに対して、黒の Q と2つのポーンを得ているので、白が有利となります。

入門書や入門サイトなどで大抵 駒の価値がポイントで表されてますので、このサイトではご説明してきませんでしたが
クイーン 9
ルーク 5
ビショップ 3
ナイト 3
ポーン 1

というのが一般的な駒の価値です。状況によって駒の価値は変わってきます。




白は両サイドの Pawn Majority と、クイーンの攻撃力の活用
黒はピースをタダ取りされないように気をつけながらマイナーピースの活用

といったところでしょうか。ゲームでは 19.Qe2 a5 20.Rc2 Rb8 21.Rfc1 Bd7 22.f3 Ng5
下図の局面で合意によるドローとなったようです。 Fritz13 の分析を見ると 白有利な
ようですが。





26...Bc5 の局面


Carlsen vs. Bareev 0-1

ここから 27.Nb6+ Bxb6 28.Rxd7 Kxd7 29.Qf3 下図となります。



クイーンと 3つのピース交換となったわけではないですが、 Q vs. 3つのピース となりました。 Fritzs13 の分析によると白有利なようですが・・・



42...Bf4


白優勢だったのですが、 43.Qf8+?? の1手により形成逆転! 
43.Qf7 か 43.Kb6 なら白優勢でした、難しいですね。

43.Qxc3?? とすると 43...Bd2 44.Qxd2 Rxd2 45.h5 Rg2 46.Kxb5 Rg5+ 47.Kc6 Rxh5 などで黒が勝てます。



43...Kb7


44.Qxf4?? とすると 44...Ra2+ 45.Kb4 Ra4+ で黒が勝てます。

44.Qf7+ Bc7+ 45.Qxc7+ Kxc7 46.h5 Rg2 で白リザイン

3つのピース vs. Q で 3つのピース側が勝つのは容易ではないですが、3つのピースをどう使えば良いか、チェスソフトの分析を参考にすると良いでしょう。コンピューターを相手に対戦すると、自分がどちら側でも勉強になります。


マイナーピース + ルーク と Q の交換

相手のマイナーピース + ルーク に対し、自分のクイーン を交換する場合もあります ( 交換を避けられず )。駒の価値で比較すると 8 対 9 の交換となり、クイーンをなくした方が大抵不利となるでしょう。参考例は特にあげません。


Queenless Middlegame

オープニングでクイーン交換が起こり、両者のクイーンがなくなった状態でミドルゲームに入っていくことを クイーンレス ミドルゲーム と言います。クイーンがなくなってしまうと攻撃力が落ちるので、攻めづらくなったり、つまらなく感じてしまうかも知れませんが、Queenless Middlegame の局面でどう戦っていけば良いかの経験は、チェスの実力向上に役立ちます。

通常のチェスなら、自分のオープニングレパートリーで Queenless Middlegame になるものがあると良いですが、通常のチェスだけでなく、Chess960 でも Queenless Middlegame になったらどうすべきか考えられるようになりましょう。

お互いクイーンがなくなると、自分が不利な時にクイーンによる連続チェックから同形三復でドローに持ち込むということはできなくなり、マテリアル ( 駒の損得 ) や戦略的内容の優劣が勝敗に大きく影響してきます。また、クイーンによるダブルアタックや、クイーン サクリファイスがなくなり、キングに対する攻撃が減少するので、場合によってはキャスリングせず、キングをセンターに近い位置に保つこともあります。

From the Opening into the Endgame - Edmar Mednis の本では通常のチェスで Queenless Middlegame になる白側のオープニング レパートリーを紹介してます。


1.e4 d5 2.d3


1.e4 d5 の Scandinavian Defence では 2.exd5 となることが多く、2.d3 では 2...dxe4 3.dxe4 Qxd1+ 4.Kxd1 次図 となり、キャスリングできなくなった白が不利に
感じます。



白はキャスリングできなくなり、先手の利を失うものの、c2 がキングの安全場所となり、まだ十分戦えるため、黒は油断できません。

4...Nc6 5.c3 e5 6.Be3 Be6 7.Kc2 0-0-0 8.Nd2 下図




黒のプレイヤーはこのような局面に慣れていないため、白が得意とする戦い方に引き込まれやすいです。オープン d ファイルでルーク交換を行い、白はできれば白マスビショップ同士を交換して、黒に Bad Bishop の黒マスビショップを残させ、エンドゲームの
勝負に持ち込みます。

1つ白が気をつけなければならないことは、Bc4 として白マスビショップ交換を急ぐと
...Rxd2+ 、Kxd2 Bxc4 でマイナーピース2つとルークの交換となり、黒有利となります。



1.e4 d5


黒の変化が多くなるので、初心者 や 初級者の方は素直に 2.exd5 とした方がいいですが、 2.d3 とする利点としては Queenless Middlegame を経験できることと、黒プレイヤーを不慣れな戦いに引き込めることです。



1.e4 d5 2.d3


2...dxe4 とするのは悪くないですが、それは白プレイヤーの狙いに乗ることになるため

黒としては
2...e5!? 3.exd5 Qxd5 4.Nc3 Bb4! 5.a3 Bxc3+ または 5.Bd2 Bxc3
( 黒は白の Nc3 でクイーンを後退させずに済む )

2...Nf6
2...Nc6!?
2...g6!?
とする方が、白プレイヤーにとって厄介でしょう。

2...c6 と 2...e6 は可能ですが 2.d3 をとがめることにならないので、黒プレイヤーとしては避けたい手です。 


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